里山隊

旅の節目に再び山登り

2014年3月25日

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愛南町のイメージキャラクター『なーしくん』と感動の対面を果たした後は、本日宿泊する農家民宿『かじか』のある山出(やまいだし)地区へ。

以前、『ひがしやま』の取材でうかがった赤松さん宅のご近所で、近くには『山出(やまいだし)観音水』と呼ばれる名水や、美しい棚田がある、典型的な里山です。

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宿の前は『山出川(やまいだしかわ)』という小川が流れ、家の前には1本の桜の木がほぼ満開でした。名前の由来は川に『かじかがえる』が生息しているからで、女将の濱本恵子さんいわく「きゅるきゅるきゅるー」と鳴くそうです。

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部屋からは小川のせせらぎを聞きながら、桜の木を眺められるようになっています。ゆるやかに時が流れていく、なんとも贅沢なひととき…。

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宿ではグリーンツーリズムの一環としてさまざまな農業体験が用意されており、そのなかから『しば餅づくり』と『ほうちょう汁づくり』に挑戦しました。
愛媛県南部では『かしわ餅』のことを『しば餅』と呼びます。今回は濱本さんがあらかじめ下ごしらえをしてくれていたので、自家製の餅粉に砂糖と塩を混ぜた物をひたすらこねていきます。
ポイントはちゃんとこねることで、そうしないとパサパサになってしまいます。次に自家製の『こや豆あん』を餅で包み、正式名を『サルトリイバラ』という『しば』で包み、あとは蒸すだけ。

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できあがったしば餅はアツアツのモッチモチ。やはり自分で作ったものはおいしいです(笑)。

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ほうちょう汁は小麦に塩を入れて練ったものを、すりこぎ棒で一生懸命こねることから始めます。足で踏みつける人もいるくらいですから、かなりの力が必要です。次に伸ばした生地を折りたたみ、包丁で切っていきます。
ほうちょう汁という名前の由来は、包丁で切るから。あとはうどんのように切ったものを、しょうゆ出汁の中に入れて煮込めば出来上がり。

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ほうちょう汁の具材はごぼう、にんじん、薄揚げ、じゃこ天など、季節によってはしいたけが入ります。山梨の『ほうとう』に似たような食感で、身体がよくあたたまります。

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晩ご飯ができるまでに時間があったので、近所にある『山出憩いの里温泉』へ。泉質は低張性弱アルカリ性冷鉱泉で、源泉掛け流し。湯船は2つで、露天風呂がないのは残念。宿泊施設も備えていて、近くにはログハウスやキャンプ場もあり。人里離れた場所にもかかわらず、町内外の人たちでけっこう賑わっていました。

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宿を一人で切り盛りする濱本恵子さんは地元出身で、以前はとある会の役員を務められていたそうです。数年前、愛媛県の方から農家民宿をやってみないかと持ちかけられ「自分がやるつもりは毛頭なかった(笑)」にもかかわらず、物事がとんとん拍子に進み、2006年4月に農家民宿をオープン。

濱本さんが民宿を営むうえでこだわっているのは「掃除と料理」。たしかに僕たちが用意してもらった和室はちりひとつなく、料理はご本人いわく「田舎料理になりますけど、地元の食材にこだわっています」とのこと。

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おいしいお米は山出観音水を引いた濱本さん所有の棚田で穫れたもの。野菜は家の前の畑で採れたものか地元の産直市から仕入れたもので、魚は今だとカツオやハマチ。甘い味噌は自家製の麦味噌。他にもヒメチと呼ばれる魚を使った『丸ずし』、あこや貝の貝柱や蕾菜(つぼみな)のフライなど、めずらしいものばかり。また、旬を大事にして、基本的に肉類は使わないそうです。

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川沿いに建つ住宅はみな、目の前を流れる山出川にアクセスできるよう川面に向かって階段が伸びています。昔は川で野菜などを洗っていたそうです。

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宿に到着した時から疑問に思っていた、わらを棒状に束ねて巻き固めたもの。このへんでは『ほて』と呼んでいて、さつまいもや大根などを串に刺したものをわらに刺しておくと、いい感じに乾燥するそうです。里山ならではの風物詩ですね。

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山出地区の魅力は濱本さんいわく「何もない(笑)。あ、温泉がある。夏に来た大学生はうわぁーと言いながら家の前の川に入っていきます。童心に返るんでしょうね。やっぱりね、自然じゃないかと」とのこと。さらに「過疎の先進地」とも。
自然しかり、人情しかり、ここには人影もまばらな過疎の集落だからこそ得られるもの、残っているものがたくさんあるような気がします。

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愛南町を巡る旅の終わりは、愛媛県と高知県の県境に位置する標高1064.4メートルの篠山(ささやま)へ。ここは古くから山岳信仰の霊地とて知られていて、頂上には篠山神社が建立されています。第2駐車場に向かう途中にある『不老長寿の水』をいただき、「頂上まで一○○○米」と書かれた道標のある登山口から頂上を目指します。

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普段からスポーツクラブで走ったりはしているものの、階段状の急坂に手こずり早くもバテ気味。しかも折からの霧で、後ろ姿はさながら『天国への階段』のよう。

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それでも、後半は傾斜がゆるくなったので少しはラクになり、以前、登ったことのある濱本さんの「滑るから足元には気をつけて」という教えを胸に、汗びっしょりになりながらも40分くらいで頂上に辿り着くことができました。篠山神社にも旅の安全を祈願しておきました。

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予想していた通りに周囲は雨と霧で何も見えず。「やっほー」と叫んでみても、何も返ってこず。地面にむしろが敷いてあるのは、樹木を寒さから防ぐためだと思われます。

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気を取り直してあたりを見回すと、「南 伊豫國 境」と書かれた碑があり、裏には「北 土佐國 境」と書かれていました。近くの水たまりは『矢筈の池』と呼ばれ、その昔、池の中央に立石があり、その石が伊予(愛媛)と土佐(高知)の国境であったと伝えられています。

帰りは篠山神社に旅の安全を祈願して、木の根っこに足を取られそうにながらもどうにか帰還。4月下旬から5月上旬にかけてはアケボノツツジやシャクナゲの花で山一面が埋め尽くされるそうです。

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篠山からの帰り、里山のいたるところで満開の桜と出くわしました。四国中央市から始まった僕たちの旅は愛南町で節目を迎えます。とはいえこれが終わりではなく、里山隊の旅はまたまだ続きます。
投稿 おかべぇ
…………………本日の行程…………………
愛南町
16:00 かじかの宿

(翌日)10:00 篠山

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農家民宿かじかの濱本恵子さん

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篠山