里山隊

横井農園 横井隆志さん (西条市)

初春を彩る風流な習わし「七草」を手軽に
横井隆志さん
横井隆志さん
横井農園の七草横井農園の七草(すずしろ)横井農園の七草横井農園のビニールハウス

携わった里山里海グルメ

アクセスマップ

脱サラして家業の農園を継承

せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ。古来日本には、正月最初の「子(ね)の日」に若菜を摘む風習があった。『七草』はその風習の名残と言われ、1月7日に七草を粥に仕立て、無病息災を願いつつ食べるという風流な習わしだ。ひと昔前は野原や山裾で摘み草をしたものだが、7種類すべてを揃えることは難しく、何かしら欠けることも多かった。

近年では手軽にこの七草が手に入るようになった。新春のスーパーマーケットの店頭にはパック詰めにされた七草が並ぶ。年に一度、1月7日前の数日間だけ店頭に並ぶこのパック。身近に野原やあぜ道がなくなっても、手軽に伝統に親しめるため、都会暮らしにはありがたいものだ。

『名水百選』にも選定された『うちぬき』で育った西条市の七草は生産額、出荷額ともに全国トップクラス。2013年の出荷量は約95万パックを誇る。

次世代に七草の風習を伝えたい

『JA西条春の七草部会』部会長でもある『横井農園』の横井隆志さんは、農業歴13年。前職でのサラリーマン歴は22年と長く、いったん農業から離れた後で農家を継ぐことになった。ためらいや不安は「当たり前のことだから」となかったようだ。なんと『七草』のパックの創始者が自身の父親だったことから、なるべくして七草農家になったという。「種をまいて、実になって、出荷する。手をかけたものが成果となる。これはうれしいものですよ」。サラリーマン時代にも、正月には家族総出で七草集荷を手伝っていたそうだ。

七草は12月に入ると出荷までまったくの無農薬で作られる。そのうえ、形、規格の整った新鮮な7種を出荷日に合わせて育成しなくてはならない。露地やハウス、種まき時期をずらすなどして、生育を揃えるのだ。「難しいだけに達成感があります」と横井さんは充実した表情を見せた。

近年、西条市内の全小・中学校35校の給食で七草粥がメニューになった。横井さんは「冬休みの関係があって、実際は1月7日には食べられないけれど、それでもこの日には七草を食べるものだと、次世代に伝えていきたい」と意気込んでいる。

農園では毎年大みそかから作業が始まり、アルバイト160人の手を借りて正月返上で出荷作業に追われる。「正月はないんですよ」という横井さんの満面の笑顔のなかに、新春の食卓に伝統の食品を提供することへの誇りが表れていた。

関連リンク
関連ファイル