里海隊

しまなみイノシシ活用隊 渡辺秀典さん (今治市)

嫌われ者のイノシシを捕獲して商品化
渡辺秀典さん
渡辺秀典さん
「あらくれポークソーセージ」赤身がぎっしり詰まっていて歯ごたえもあるボローニャ(左)とウインナーおみやげ大心

携わった里山里海グルメ

あらくれポークソーセージ
海を渡ってきたイノシシを食べやすい食材に

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自然の恵みをおいしく食べたい

自然が与えてくれた命の大切さを知っているからこそ、おいしく食べたいという思いがある。瀬戸内海に浮かぶ今治市・大三島の観光農園『おみやげ大心』代表の渡辺秀典さんは柑橘栽培のかたわら、任意団体『しまなみイノシシ活用隊』会長として活動。大三島や伯方島に生息するイノシシを捕獲して『あらくれポークソーセージ』などの商品を製造・販売している。

大三島にはかつて、イノシシが住んでいなかったそうだが、約8年前から突然、姿を見せ始めたという。山頂付近の耕作放棄地にあるエサを求め、海を泳いで大三島へ渡ってきたと言われている。愛媛大学卒業後、柑橘栽培に取り組んでいた渡辺さんも被害に遭った。柵を設置するなどの対策を試みたが、効果はあまり出ず、被害は減らなかった。

自分たちでもイノシシを捕獲できるように、生産者仲間とともにワナ猟の免許を取得して駆除に努めた。だが、処理には時間と労力を要するため、食べられないものはやむなく埋めていた。そんな現状を目の当たりにした渡辺さんは「もったいないというか、かわいそう。それなら、おいしく食べてあげたい」と考えるようになった。自然が与えてくれた恵みを有効利用するべく、イノシシ肉の加工・販売を目指すようになった。

イノシシとは持ちつ持たれつの関係を維持

まずは食肉処理施設をつくることから始めた。県や今治市と約3年かけて交渉した末、旧学校給食センターを改築して使用することにこぎつけた。2010年に大三島町、伯方島町の農家や猟友会で構成する『しまなみイノシシ活用隊』を設立。同年、保険所の食肉処理業許可を得て、本格的に精肉加工食品の製造活動をスタートさせた。

「くさくて固い」というイメージを払拭させるため、捕獲後すぐに血抜き処理をし、水に浸して冷やすという、においを消す技術を習得した。精肉の他に、誰もが気軽にイノシシ肉を楽しめるよう、約3年前に『あらくれポークソーセージ』を開発。ワナなどで傷んだ部分は使わず、上質なものだけを使うように徹底している。いまでは、高級レストランや料理店などでも使用されている。

現在は年間800頭を捕獲しているが、渡辺さんは「すべてを駆逐することは無理。イノシシと上手に付き合っていくしかない」と持ちつ持たれつの関係を維持する考え。「野生の命を奪うということは、おいしくきれいに食べてあげること」と天からの恵みに感謝しながら、これからもおいしいイノシシ肉を供給していく。

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