里海隊
郷土料理

包丁汁 (宇和島市)

懐かしい味がする南予地方の家庭料理
包丁汁
太くてコシのある麺が特徴食堂から見える下波の海派手に飾られた大漁旗が目印ご主人の芝磯美さんと一世夫人
包丁汁

出汁はしょうゆとじゃこ天から

どこか家庭的で懐かしい味がした。小さな器のなかには、うどんのような太い麺、じゃこ天、青ネギ。出汁はしょうゆとじゃこ天だけから取っているそうで、とてもシンプルだ。まずはスープをすすってみる。じゃこ天からにじみ出てきた魚のやさしい味がする。麺はうどんのようにツルツルとはしていないが、コシが強く、噛みごたえがある。平らげた時には、おなかがいっぱいで、体もポカポカしていた。

宇和海が眼前に広がる宇和島市の下波地区。食堂『いかだ屋』で『包丁汁』をいただいた。同地区をはじめ、南予地方の海岸線の町に広く伝わり、冠婚葬祭や大勢のお客さんが集まる際に出てくる郷土料理。ご主人の芝さんは「夫婦で海や山仕事から帰ってきた後、おかずをつくっているヒマがないというところから生まれたと聞いています」と教えてくれた。地域や家庭によって調理法はさまざま。なかには、鯛から取った出汁や鯛のぶつ切りが入った、ぜいたくなものもある。

長い時間をかけてつくる、こだわりの太麺

いたってシンプルな料理にも見えるが、麺づくりにはこだわりがある。まずは時間をかけてしっかりと練った小麦粉を数時間置く。だんご状にしてラップで包み、発酵させる。コシが強くなったら、生地を伸ばして、包丁でカットする。それをまた半日置いて、ようやく完成だ。幅は1センチ以上あり、長さが約10センチと短いのが特徴。包丁で切ることから『包丁汁』と呼ばれるようなった。

西日本には旧暦の10月(現11月ごろ)の亥の日に行われる「亥の子(いのこ)」という祭りがある。五穀豊穣を願い、家族の無病息災、子孫繁栄を祈る年中行事で、包丁汁を亥の子の神様に供え、そしていただく。古くからの伝統行事には欠かせない一品なのだ。

『いかだ屋』ではコース料理のひとつとして提供。芝さんは「宇和島市街地から訪れるお客さんでも、懐かしい味に喜んでくれる人がいれば、この料理を知らなかったという人もいる」と説明した。海と山に囲まれた場所から生まれた料理を食べて、なんだか母の味が恋しくなった。
ここに注目!
亥の子は主に西日本で見られる年中行事。子どもたちが地域の家を回り、約10本の縄をつなげた平たく丸い石を上下させて地面をつく。地面をつくのは田の神を天に返すためや、猪の多産にあやかるという面もある。
商品データ 小麦粉、じゃこ天、青ネギ、しょうゆ他
店舗名 いかだ屋
住所 愛媛県宇和島市下波4737
営業時間 要予約
定休日 不定休
TEL 0895-29-0768
FAX 0895-29-0831
URL
その他 いかだ屋は基本的に1日1組限定。1人3500円からのセットメニュー。利用時間は2~3時間

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